「プロフェッショナル 仕事の流儀」今日のゲストは、北海道の酪農家、三友 盛行(みとも もりゆき)氏でした。青年海外協力隊東京OB会の先輩がこの牧場でアルバイトをしていたことがあるそうで、興味深く拝見しました。
ご自身のことを「農民」と自然に語る三友さん。開拓民として北海道に入植して40年。最初の10年は、無我夢中で樹を切り倒し、規模拡大に熱中したそうです。しかし、ふと立ち止まってふり返ったとき、自分があこがれた原風景である「木と草に囲まれた自然の農場」とは程遠い現状に気付き、悩んだ末、農場の1割に木を植える決断をしたそうです。
木を植えるということは、草地が減る。つまり、飼育できる牛の数を減らすということ。どんな仕事でも、特に経営者や自営業者にとって、規模を縮小するという決断は、本当に勇気のいることだと思います。三友さんは、その決断をしました。その理由は、「立ち止まり、足るを知る」ため。とても心に響く言葉でした。
そうして、自分の身の丈にあった「マイペース酪農」を始めた三友さんの農場では、もちろん売り上げは減ってしまいましたが、意外にも利益が落ちなかったそうです。それは、経費が減ったことに加えて、牛へのケアが行き届くようになったことで、病気が減ったことや、乳の収穫量が上がったことによるもの。何より、牛が幸せそうになったと、三友さんは微笑みます。自然相手の苦労は今も変わらないそうですが、今では「酪農の神様」として、視察や講演依頼が絶えないほどになっています。
自分が一番心に響いた言葉は、取材者が三友さんに「なぜ自然の農法にこだわるのか」と尋ねた時の、三友さんの答え。「自然とともに生きる。それが農民の矜持だよ」です。矜持(きょうじ)。久しくこの言葉を聞いていなかったように思い、まずは新鮮でした。「プライド」という言葉が浸透し、自分も好きな言葉の一つですが、矜持にはもっと重い、背筋が自然と伸びるような響きを感じます。国語辞典には、「自信や誇りを持って、堂々と振る舞うこと。」と書いてありました。
自分を農民と言い切り、矜持を持って生きる。三友さんにとって、酪農は天職なのでしょう。天職にしたがって、日々を謙虚に生きる人は、本当にかっこ良いです。
キャリナビのメンバーが取材した、徳島県上勝町の菖蒲 増喜子(しょうぶ まきこ)さんも、三友さんと同じく、穏やかで優しい顔をしていました。菖蒲さんは、おばあちゃんたちの葉っぱビジネスとして世界中から注目されている「いろどり」農家のお1人です。
自分も矜持を持って生きたいと、強く願っています。想いは漠然としていて、なかなか現実の仕事に落とし込めていませんが、次の転機を好機と捉えて、ゆっくりじっくり見つけていこうと思います。三友さん、菖蒲さんのような、素敵な大人になるために。
◆目次: